ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅

ヨルク・シュマイサー(Jörg Schmeisser, 1942-2012)は世界を舞台に活躍した銅版画家です。

ドイツに生まれハンブルグに学び、京都に留学、のちにはキャンベラに移り住みオーストラリアの版画教育に尽力しました。

「旅する版画家」と称されるように、中東、アジア、ついには南極に至る世界各地を訪ね、出会った風景や事物を銅版画に刻みました。

しかしシュマイサーは単に旅先の風景を描いた画家ではありません。繰返し訪ねた京都やヴェネツィア、長い年月を経て再訪したアンコールの遺跡。数千万年をかけ形成されたオーストラリアの岩山、漂流し崩壊しダイナミックに姿をかえていく南極の氷山。季節がめぐるたびに描いた新芽、アトリエの前の海岸に流れ着いた貝殻―マクロからミクロまで、彼が描くすべての底流をなしていたテーマが「変化」です。世界そして自分自身に起こる変化を版画の画面に捉えようとする、生涯をかけた試みは優れた作品を創り出しました。

国際的に活躍したシュマイサーはまた日本を深く愛したアーティストでもありました。古典文学に親しみ、水墨画を学び、各地を訪ねてはさまざまな人々と語り合いました。

若き日に出会った日本美術は生涯に渡る影響を及ぼしました。奈良という土地も、シュマイサーは関わりの深い作家です。奈良・高取町の版画工房・車木工房へ招かれたシュマイサーは、そこで銅版画の技術指導を行うと共に、個展を開催するなど活発に自身の創作活動を展開しています。

また、シュマイサーの心に深く刻まれたのは、自分の仕事に真摯に取り組む日本人の誠実な姿勢と誇りであったとも語っています。日本文化の発信が求められる今、自らの視点で日本を理解しようとしたシュマイサーのあり方は、国際理解に大切なヒントを与えてくれることでしょう。

作品とその人柄で出会った人々を魅了し続けた画家は、2012年6月、病のため惜しまれながら70歳で世を去りました。逝去後、初めて開催される本格的なこの回顧展では生涯のテーマ「変化」を軸に、国内外のコレクションより出品される、初期から晩年までの代表作約180点でヨルク・シュマイサーの軌跡をたどります。

主催者名

奈良県立美術館

日時

2019年05月01日 09:00 - 31日 17:00

場所

奈良県立美術館
奈良県奈良市登大路町10-6

お問合せ先

0742-23-3968

ウェブサイト

http://www.pref.nara.jp/11842.htm

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