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私とドイツとNRW(後編)ドイツを走って、食べて、考えた。日本人との違いと共通項

川崎重工業 Kawasaki Robotics GmbH/Kawasaki Robotics(UK) Ltd. 前社長 高木 登さん 2014年からのデュッセルドルフへの赴任は、ポジティブな気持ちで受け入れることができました。デュッセルドルフには日本人のコミュニティや日本食のレストラン、食料品店が非常にたくさんありますし、私たち日本人にとってはとても居心地のよい都市だと思います。毎年恒例の日本祭り「Japan Tag」も開催されていて、Kawasaki Roboticsも毎年ブースを設けさせていただき、ロボットを展示しています。ヨーロッパの中心に位置し、1、2時間でどの都市にも飛んでいけるというのは、ビジネスにとってももちろん最高の利便性です。 デュッセルドルフで暮らした5年間に、私と妻はさまざまな場所へ出かけました。 妻はヨーロッパのアンティーク製品が好きで、月に2、3度もマーケットに出かけるなど、ショッピングを存分に楽しんでいましたね。とくに、デュッセルドルフで月に一度開かれるラートシュレーガーマルクト(Radschlägermarkt)がお気に入りで、何百という店が軒をつらねるなかを何時間も歩き回ったのもよい思い出です。 赴任当初はローマやパリなどの大都市に観光に行っていましたが、後年はデュッセルドルフから車で1、2時間で行ける小都市を多く訪れました。アーヘンやケルン、妻が好きな――つまりショッピングを楽しめるということですが(笑)――クレーフェルトへ、電車の旅を楽しむこともありました。 家があったのはメアブッシュという町で、その近くの森を散歩するのも楽しみのひとつでした。私はランニングが好きで、在任中に7都市のマラソンにエントリーし、デュッセルドルフはもちろん、アムステルダム、ベルリン、パリ、フランクフルト、ロッテルダム、ミュンヘンを走りました。マラソンのために、週に2、3回、平日は10km、週末は20kmを走るトレーニングに勤しみましたが、森のなかを走るのは格別でしたね。 また、5年間のドイツ生活で、日本人とヨーロッパ人の間にさまざまな違いを感じました。 まずは、ドイツ人だけでなくヨーロッパの人々は皆、自国の歴史をよく知っていることに驚嘆しました。彼らは故郷の過去の出来事や文化についてよく私に話してくれました。ほとんどの日本人が自分の地域の歴史に興味がないのを残念に感じた出来事でした。 私たちの世代は、仕事、仕事、仕事! で、家族よりも仕事が重要事。それとは反対に、ヨーロッパの人々は長い時間を家族とともに過ごし、家族のことを第一に考えます。旅先でも、日本人は短期間に多くの場所を訪れようとしますが、彼らは家族でのんびりと一ヵ所に滞在します。 しかし、その休暇には、正直なところかなり困らされました。ドイツ人たちは3週間の長期休暇を取るのが普通ですが、その間の穴を埋めるのは簡単なことではありません。日本人は休暇中にメールをチェックすることもありますが、彼らの場合は3週間にわたって仕事が完全にストップしてしまいます。もっとも、対する顧客も同じ状況なので、この件に関してはヨーロッパでは問題になりませんが。 それでも、ドイツ人の思考の道筋は日本人とよく似ていると感じました。私が業務におけるコンセプトや戦略などについて説明すると、ドイツ人たちはそれに基づいて正しく動くことができます。しかし、その他の国々の人たちは、私が想像しているようにはなかなか動いてくれません。ドイツと日本の考え方の構造と論理が似ていて、コミュニケーションが円滑に取れるのだろうと感じました。また、ドイツ人の話す英語が日本人にとって理解しやすいという点もよかったですね。ちなみに、最も難しいのはイギリス人の英語ですね!(笑) 会食の作法も異なります。私たちも顧客を夕食に連れて行くことがありましたが、ヨーロッパでは、多くのケースで1軒目のレストランで解散になります。日本では食事をして、2、3軒目はバーに行って……と、たいてい長時間にわたりますよね。 会食で私がよく利用したのは、デュッセルドルフにあるドイツ料理店の「シューマッハー(Schumacher)」、日本料理店の「やばせ」「なごみ」「日向」などです。 「シューマッハー」では、シュバイネハクセ、アイスヴァイン、シュニッツェルなどの典型的なドイツ料理が楽しめます。日本人の同僚などが来ると、ドイツ料理やビールをほしがるので、たびたび案内しました。日本料理店では、まるで日本の居酒屋に来ているような気分になったものです。 個人的にはメアブッシュの自宅近所の「ミカド」が好きで、ドイツでは珍しい“日本スタイルの中華”を味わうことができました。妻のお気に入りは、デュッセルドルフの旧市街にあるドイツ料理店「ハウスブラウエライ・ツム・シュリュッセル(Hausbrauerei Zum Schlüssel)」で、インテリアや雰囲気では「シューマッハー」より上だと言っていましたね。 正直な気持ちとしては、もう少し長くドイツにいたかったような気もします。ふと、大好きなカリーヴルストのあのソースが恋しくなることもありますね(笑)。 高木 登 (タカギ ノボル) 1985年、神戸製鋼所入社。電動塗装ロボットの開発及び塗装ラインの制御システム設計を担当。2000年、川崎重工業株式会社に移り、ロボットビジネスセンターにて制御システム設計の責任者として従事。2010年にFAシステム部長に就任し、一般産業機械業界へ幅広くロボットシステムを提案・設計するエンジニア部門を統括。2014年1月にKawasaki Robotics GmbH及びKawasaki Robotics(UK) Ltd.のPresidentに就任し、欧州全域及びロシア、中東、アフリカ地域の拡販を指揮。2018年12月末帰任。 (Text von Maho Mizoguchi Stelz)
出典: © 河内秀子

学校では教えてくれないドイツ語 Vol. 15

いよいよEU加盟国28カ国で一斉に行われる欧州議会選挙選挙。今回は、ベルリンに散りばめられた各政党のポスターから、スローガンの言葉選びと、そこから滲み出る各政党の姿勢に注目してみました! 政治への参加意識が高いと言われるドイツですが、実のところこれまで欧州議会選挙は割と、どうでもいい感が漂ってる選挙だったんです。参加率はだだ下がりで、前回などは半数割れ。 ところが、今回は別。欧州連合に懐疑的な人も増え、反EU的な政党が力を伸ばし、結びつきがかなり弱まっているので、これまでにない高い関心が寄せられています。 ●AfD ドイツのためのもうひとつの選択 „EURABIA“ ユーラビア 選挙のたびに、煽って炎上させてなんぼのスタイルで、注目を集める右派ポピュリスト政党「AfD」。今回の欧州議会選挙の大きな争点の一つが、移民・難民問題ですが、今回もここを煽れば食いつくと言わんばかりのポスター。 「ヨーロッパが「ユーラビア」にならないように(AfDを選ぼう!)」というスローガン。 この「ユーラビア」という言葉は、ウトヤ島で銃を乱射、そして時限爆弾で、77人の命を奪ったテロ事件の犯人が使った言葉でもありますが、ユーロ+アラビアの造語で、このまま放っておくとヨーロッパがイスラム化する、欧州文明がイスラムに滅ぼされてしまうと、外国人排斥を煽る言葉でもあります。 しかもこの「裸の女性が奴隷市場でターバンを被った男性に売られる」モチーフ選び。どう見ても悪意しか感じられません。 https://twitter.com/berlinbau/status/908821292459134976 女性の裸で人目を引きたかっただけじゃないかという指摘の記事もあり。女性差別もいいとこです。そういえば、AfDは前回のベルリン市議選で「ブルカ?ビキニの方が好きだな」というビキニ姿の女性のポスターも作っていました。 ●CDU キリスト教民主同盟 „STARK“ 強い ポスターの言葉遣いだけをみていると、上記の右派ポピュリスト政党AfDとたいして変わらないのではないか……という指摘をされたこともある、ドイツ与党のCDUです。 「強い」ヨーロッパ 「安全な」ヨーロッパ 私たちの「故郷」 「私たちのヨーロッパは、豊かさを作る」など、銀行や保険関係者、富裕層が多いと言われる支持層にアピールしています。 「悪い外国人によってドイツが安全ではなくなっているけど、大丈夫ですよ。強固に、豊かな欧州を取り戻しましょう!」と言っているような、なんとなく居心地の悪い印象を受けるのは私だけでしょうか……? と思っていたら、1991年のCDUポスターがネット上に出回って話題になっておりました。 「これが1991年のCDU公式ポスターだ」 スローガンは、「難民の悪用を終わらせろ!」 (4万人の難民書類を処理。見せかけの難民を徹底的に追放。ドイツ基本法の変更) ●Bündnis 90/Die Grünen 同盟90/緑の党 „MUT“ 勇気 アンケートや世論調査などを見る限り、今回飛躍しそうな雰囲気の緑の党も、今回は「強い」路線。 わざと、これまで右派が使っていた言葉を選んでいるように感じました。 例えば「Mut 勇気」は、前述のAfDが好んで使っている言葉で、これまでも「ドイツへの勇気を!」「真実への勇気を!」というポスターがありました。 それを逆手にとって「勇気が出れば、憎しみがひっこむ」とか「勇気ある社会は不安を煽らない」。 「stark 強い」も「社会的なヨーロッパだけが強いヨーロッパ」と、「結びつき」に重点を置いてアピール。強さでも、力の強さといより心の強さを感じさせる言葉選びをしています。 ●Die PARTEI あの政党 „IRGENDWAS“ なにか 毎回クスッと笑える言葉が踊る「あの政党」こと「ディー・パータイ」のポスター。 2004年に、風刺作家でジャーナリストでもあるマーティン・ゾンネボルン (Martin Sonneborn) をはじめ、風刺雑誌の編集部が立ち上げた政党で、2014年から欧州議会に議席も持っているのです。 今回は「IRGENDWAS なにか」と書いたポスターを見かけてびっくり。 まあポスターには「何か」が書いてあればいいんですけどね(笑) 欧州議会選挙への興味の薄さをチクリと皮肉って、投票を呼びかけます。 カフェ・ケーキ・気候「“あの政党"を選ぼう。ヨーロッパにはあれで十分だ」と。 ●Die Linke 左派党 „REICHTUM“ 富 「富」 「儲け」 「コンツェルン」 に対抗しよう! 文字を大きく使ったグラフィックでアピールするのは、左派です。 「教育、バスと鉄道にもっとお金を!富を公正に分けよう」 貧しい人の立場に立ち、ほんの少数の人間が富を独占する世界の不平等。すごいスピードで広がっていく格差を批判する姿勢は変わりません。 ●SPD ドイツ社会民主党  „ZUSAMMEN“ 一緒に 今回、イメージ広告のようなふんわりぼんやりした感じだったのが、SPDです。アピールしているのは「ZUSAMMEN」一緒に、という言葉。 でもいまいち具体的な党の姿勢が見えてこない。低迷する政党の姿勢がポスターにも現れているようです。 余談ですが、桜が咲く頃、美しい桜並木を見ていたらその真ん中にドーンと「気候保護」と書かれた、SPDのポスターが。 写真を撮っていたら、通りがかりの人が「やっと春が来て緑と桜が綺麗になったと思ったのに、こんなど真ん中にポスターを立てて!気候とか環境保護とか言って、こんなことやるんだから!だからSPDは!!」と怒りをぶちまけて行きました。 さあ、気になる欧州議会の結果はどうなるでしょうか。 選挙結果を受けて、今後また反EUの動きが高まって行くのか。選挙権のない私ですが、固唾を飲んで結果を待ちたいと思います。 執筆者:河内秀子 東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』、『Young Germany』『Think the...
出典: © derdiedas.jp

私とドイツとNRW(前編)デュッセルドルフで会社を率いて――乗り越えた壁と成長の秘訣

川崎重工業 Kawasaki Robotics GmbH/Kawasaki Robotics(UK) Ltd. 前社長 高木 登さん 私は1985年に神戸製鋼所に入社し、塗装ロボットの開発や塗装ラインの制御システム設計を担当するエンジニアとして勤務してきました。2000年、川崎重工業が神戸製鋼所の該当部門を合併した際に、私も同社に移ることになりました。 約10年前まで、主に自動車関係の塗装ロボットシステムを担当していたため、日系自動車メーカの生産ラインがある北米や東南アジア、ヨーロッパ各地へよく出張していました。場合によっては数ヵ月間滞在することもありましたが、本格的に国外に住んだのは今回のドイツが初めての経験になりました。 実はそれ以前にも、上司から海外駐在の打診は何度もありました。しかし英語に自信がなかったため、2、3年は拒否し続けたでしょうか……ついにしびれを切らした上司から“職命”が下り、デュッセルドルフに駐在することになったわけです。2013年の初めのことでした。 私と妻が住んだのは、デュッセルドルフ近郊のメアブッシュという小さな町です。川崎重工業のグループ会社であるKawasaki Robotics GmbHはデュッセルドルフ西部のノイスというところに拠点を置いており、そこが私の勤務先でした。 私には子どもが3人いますが、彼らは皆デュッセルドルフには来ませんでした。長男はすでに働いていましたし、娘と次男は大学生でしたから、ドイツ赴任にそれほどのハードルはありませんでした。 ただ、妻はケアマネージャーとして働いていて、ポジションにも恵まれており、はじめは日本に残るべきか迷っていました。しかし、多くの友人たちが口を揃えてヨーロッパ滞在はとてもよい経験になると言ってくれました。その言葉に背中を押され、妻も私と一緒にドイツに滞在することを決断してくれたのです。 赴任後は、私以上にドイツの生活を楽しんでいましたよ(笑)。なかでも、彼女の培った知識を日本人コミュニティのために役立てられたのは、とてもよい経験になったようです。 というのも、現在ドイツでも高齢化問題が起きており、在独邦人の高齢者も同様に増加しているにもかかわらず、外国人であることで公的なケアが受けられないでいるそうなのです。それに危機感を抱いた日本人グループが、日本人高齢者のためのケアシステムを構築しようとしています。そこで私の妻が、プレゼンテーションをするなどし、日本で経験した専門知識を彼らに伝えることができました。 私は、2014年にKawasaki Robotics GmbHの社長としてデュッセルドルフに赴任することになり、欧州全域とロシア、中東、アフリカ地域の拡販を指揮する立場になりました。赴任直後のKawasaki Robotics GmbHの従業員数は、3人の日本人を含む計28人でした。それから約5年が経ち、私の日本への帰任が決まったときには、4人の日本人を含む70人以上になり、オフィスも手狭になって2017年には新オフィスに移転もしました。従業員はほぼ全員ドイツ人で、日本人社員とのコミュニケーションは英語で行われています。 外国に拠点を置く日本企業のトップとして頭を悩ませたのは、その“言葉の壁”でした。私自身にとっても、伝えたい内容を100%正確に英語で言うのはとても難しいこと。微妙なニュアンスを表現することができずに、従業員に自分の考えを正しく理解してもらえなかったこともありました。 2018年に会社の成長に伴って機構改変を行い、各部門のマネージャーたちに直接指示を出す形を改め、私のもとにドイツ人の副社長をおき、実務はその副社長によってなされる形に変更しました。そのことにより、私はその副社長と業務や戦略についてのより深いコミュニケーションが可能になりました。このスタイルは、日本人社長として会社全体をマネージメントするのをよりスムーズにしてくれました。 私の赴任期間中に会社の規模を約2倍にすることができたわけですが、取った戦略は営業力の強化です。そのために従業員を増やし、各自の責任分野を見直しました。また、私自身も積極的に代理店と直接コンタクトする機会を増やし、コミュニケーションを密にしました。結果として売上げも利益も2.5倍にすることができました。 川崎重工業のロボットは、あらゆるアプリケーションに対応することができ、ラインナップやサポートサービスも十全です。しかし、さまざまな分野の企業のリクエストに応えるためにはエンジアリングサポートも必要で、その部分を強化し、さらに発展を目指そうというところでの帰任でした。 ドイツの顧客に日本のロボットを提案するのは、正直なところ、そう簡単なことではありません。ヨーロッパでは、すでにヨーロッパの有名ロボットメーカーが大きくシェアを取っています。日本人が日本製を好きなように、やはりヨーロッパの人はヨーロッパ製を好みます。例え日本製品の高品質を認めていてもね。ヨーロッパのロボットメーカーの手が届かないところ、またまだ手を広げていないところで実績をつける……中国、東南アジアに誇るようなシェアをヨーロッパに広げるためには、その点が課題のひとつだと考えています。 高木 登 (タカギ ノボル) 1985年、神戸製鋼所入社。電動塗装ロボットの開発及び塗装ラインの制御システム設計を担当。2000年、川崎重工業株式会社に移り、ロボットビジネスセンターにて制御システム設計の責任者として従事。2010年にFAシステム部長に就任し、一般産業機械業界へ幅広くロボットシステムを提案・設計するエンジニア部門を統括。2014年1月にKawasaki Robotics GmbH及びKawasaki Robotics(UK) Ltd.のPresidentに就任し、欧州全域及びロシア、中東、アフリカ地域の拡販を指揮。2018年12月末帰任。 (後編に続く) (Text von Maho Mizoguchi Stelz)
出典: © 河内秀子

ドイツを代表する駄菓子といえば?!

「ドイツを代表する駄菓子」といえば?! ハリボのグミ!でしょう! ドイツ国民一人頭の年間消費量は約6kg弱で、チョコレートやクッキー類に次いで人気のお菓子。1年間で6kg、1日換算で16g。案外大した量じゃないな、と思ったあなたは、多分ドイツのグミにどっぷりハマっているのかもしれません。 ちなみに私も、渡独してからほぼ毎日ハリボのグミを1袋(200g)ほど消費しており、しまいに医者にかかって栄養失調と診断されたことがあります……。美味しいですが、何事もほどほどが重要ですね。 ●ドイツ駄菓子界のスター さて、ドイツ駄菓子界におけるグミの地位は非常に高い。まず驚くのがスーパーのグミコーナーの充実度です。店によってはお菓子コーナーの半分くらいがグミで、入り口近くにあったりするので、グミを見ずに通り過ぎるのは至難の技だったりします。デパートでは量り売りが充実していて、袋物にはない大型のグミが手に入ります。ドイツにおけるコンビニ的存在の深夜営業のお店やガソリンスタンドにも必ず数種類のグミがありますし、見本市に行けば会社のロゴが入った小袋を配られ、ホテルの枕の上や、銀行の窓口、ツーリストインフォメーションなど、ドイツでは、ありとあらゆる場所にグミが存在するのです。 ●ハリボは、2020年に創業100周年! 実はゼラチンを使ったグミキャンディーの発祥地はドイツではなく、イギリスという説が濃厚ですが(20世紀初頭、鉄道旅行の際に気軽に携帯できるお菓子をと開発されたらしい)ドイツで一番早くグミキャンディーを作ったのは「ハリボ」さん。 学校では教えてくれないドイツ語 Vol. 13 でも取り上げましたが、ハンス・リーゲルさんが西ドイツ、ボンで始めた、HA(ns) RI(egel) BO(nn) ハ・リ・ボ、創業は1920年です。そう、ハリボは来年が創業100周年!!! 90周年の際には、これまでの歴史的なパッケージを復刻した限定版が販売されたのですが、100周年にはどんなプロジェクトが行われるのか……まだ秘密だそうです。 ●金熊グミ 毎年のように登場する新作を含め、20種類以上が存在するハリボのグミ。中でも最も人気があるのがゴールデンベアー、熊の形をしたフルーツグミです。 その歴史は古く、創業2年目の1922年に遡ります。当時人気だった「踊る熊」というアトラクションからアイデアを得たハンス・リーゲルさんが、踊る熊をかたどったグミを作ったのが始まりです。 いまも首にリボンを巻いたハリボの金熊くん(黄色いですが)は、時代の変化とともに少しずつマイナーチェンジしつつも、さまざまなパッケージに登場する「ハリボの顔」、マスコット的な存在として活躍しています。 最近では、シュガーレスのフルーティーなタイプが人気のよう。 ●ハリボくん 金熊くんと並んで、パッケージに登場することもあるのがおかっぱ頭の少年、ハリボくん。黒髪のせいか、ドイツでは主に真っ黒なグミ、ラクリッツ(リコリス)のパッケージに登場することが多く、いまいち影が薄い彼なのですが、隣国フランスではロゴからして彼がメインで、しかもちょっと顔が今風?に立体的にアレンジされていたりするのが興味深いです。 ドイツのハリボグッズは金熊くんメインですが、フランスではハリボくんのものも色々揃っています。こういった国ごとの違いが面白くて、ほかの国に行くとついスーパーのグミチェックをしてしまいますが、各国で味、形、サイズなど、ドイツにはないハリボ・グミが色々見つかって面白いです。 トルコにはまだ行ったことがないですが、ベルリンのトルコ食材店では、ちゃんとイスラム法に準じたハラールのグミが売っています!(ゼラチンは豚から取れるので、ゼラチン不使用のもの) ●イースターのうさぎグミ カーニバルが終わると、ドイツはイースター商戦一色。(今年は4月18日から22日まで)スーパーマーケットにもイースターエッグや卵型のチョコレートなどがズラリと並びますが、もちろんグミもイースター限定版が登場します! 以前は、HARIBOゴールドベアーグミの熊が、味もそのまま形がうさぎに入れ代わったの「ゴールヘースヒェン(金ウサギ)」や、イースターエッグやラッパズイセンなどを象った凝った形のものを出していたのですが(2007年のイースターグミレポート)いまは、卵型のジェリービーンズなどがメイン。今年はひよこと卵の形のグミを入れた新作が出ているようです。 ●ハリボさんのよくわからないデザインセンス しかし、毎年のように新作を生み出すハリボ。そのデザインチームは一体どういう風に仕事をしているのでしょうか。ハリボ社へ直接問い合わせてみたのですが、残念ながらこれについての回答は得られず。手堅い売れ線(クマやコーラ)などを少しずつ変えるだけではなく、突然どぎついジョークを形にしたグミが出たり、やたらと凝った形のものが出たり。誰がデザインし、どうやって商品化への決定が下されているのか……商品の背景がとても気になります。 例えば、お尻型のマシュマロのグミに、カラフルなフルーツグミの耳がついた"A... mit Ohren“ (『Arschloch ケツの穴』という人を罵倒する言葉がありますが、それと意味はほぼ同じ『あいつは尻に耳がついたような奴』)を立体化したジョークグミ。これが650g入りのバケツに入っている様子は壮観でしたが、2010年前後に姿を消しました。 W杯やUEFA欧州選手権のたびに店頭に並ぶ、ハリボくんが大活躍のサッカーグミや、空港のショップメインで展開しているドイツの観光名所を象ったグミ「HAPPY GERMANY」などは、細部まで凝った作りで、ほかのグミより作るのが大変なんじゃないか?いったいどこまで細部をデフォルメするか?など、グミのデザイナーはほかのお菓子にはありえない、様々な問題にぶつかるのではないかと思うのです。 しかしドイツのグミは季節限定商品もいわゆる「旬の食材のお味」というものはなく、味はいつもとほぼ同じ。日本人としては、白アスパラガス味とかクリスマスのスパイス入りとか作ればいいのにと思うのですが、その点は全くブレがありません。あくまでも、見た目で味わう、繊細な味の違いなどは全く眼中にない、まさに駄菓子らしいお菓子と言えるのです。 執筆者:河内秀子 東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』、『Young Germany』『Think the Earth』『Newsweek for WOMAN 』などでもベルリンやドイツの情報を日本へ向けて発信させていただいています。 Twitterで『#日々是独日』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。
ヌスボイゲル; ヘーゼルナッツのフィリングを詰めた独逸系中華饅頭といった趣; 出典: © kyoto-brot.com

通販も可! スイス女性が京都で作るほっと美味しいパンと焼き菓子

“日本で体感できるドイツ・オーストリア・スイス”をテーマにお届けしている「Insider Tip」。
出典: © Florian Glappa/Roman Jäger

ドイツの大学生が学食メニューを“一流レストラン風”に仕立てた結果

学食のメニューと言えば、取り柄は安さと量ばかり。味も見た目もイマイチなのが普通だが……。 カッセル大学のふたりの学生が始めた、学食メニューの“食べ残し”を芸術的に盛り付けた写真が話題を呼んでいる。 まるで高級レストランでサーブされるひと皿のような見事な仕上がりだが……よく見てみれば、食欲減退は必至。 彼らの写真はInstagram(ID: mensa.fudprn)で見ることができるが、ここではいくつかの傑作を紹介しよう。 1 パスタ、トマトソース、パプリカ、トウガラシ 2 鶏のムネ肉、オリーブ、パスタ、バジル 3 ピザ、モッツァレラチーズ、バジル 4 七面鳥のシュニッツェル、ニンジン、サラダ 5 チキン、赤キャベツ、フライドポテト 6 レモン、ライス、オレンジの皮 7 ラタトゥイユ、オレンジ 8 カリフラワー、チーズ
出典: © Windmühlenmesser

抜群の切れ味!伝統製法で作られたゾーリンゲン生まれの“風車ナイフ”

“日本で体感できるドイツ・オーストリア・スイス”をテーマにお届けしている「Insider Tip」。
出典: © Sandra Häfelin

今年のクリスマスは「ヴァイスヴルスト」でドイツ風に!

“日本で体感できるドイツ・オーストリア・スイス”をテーマにお届けしている「Insider Tip」。
出典: © Hideko Kawachi

学校では教えてくれないドイツ語 Vol. 14

ドイツ語のテキストを英語に直すと、単語の量は多いのに、5分の1短い文章になるとか……。ドイツ語は長い!そして、その長さに比例して、略語も豊富。今回は、「素晴らしきドイツ略語の世界 Die fabelhafte Welt der Abk.」第2弾です! 第1弾ではHARIBO、Adidas、ALDI、BMWと知名度の高い略語をご紹介しましたが、今回は少しマニアックに、DDRこと旧東ドイツで使われていた略語や、近年流行中のSNS略語などを写真をたっぷり掲載させながら見ていきたいと思います! まずはDDR! 東ドイツの話に耳を傾けていると、この国独自の施設や部署の略語などが次々出てきて、聞き直すと、案外話している本人すらもちゃんとわかってなかったりして、めくるめく略語のラビリンスへと迷い込んでいってしまうのですが……、耳にする頻度が最も高い略語というと、これでしょうか。 ●VEB VolksEigener Betrieb ファウエーベー、旧東ドイツの「国営企業」のことです。 ベルリンの可愛いビールコースターに踊るVEB、「国営企業ベルリン飲料コンビナート」! ライプツィヒには、有名な「国営企業グルメ食品・ライプツィヒ」の看板なんかがあります。旧東ドイツ地区を歩いていると、いまも時々VEBの文字が目に入ってきます。 ベルリンにはVEB Orange という店名のDDR雑貨の専門店があったり! ライプツィヒで見かけたこちらは、VM。VolksEigene Möbelkombinate 国有家具コンビナート。似てるけど微妙に違いました。 また蚤の市で、DDRモノを探していると、時々出会うのが「EVP」の文字。Endverbraucherpreis(最終消費者価格)の略語です。パッケージの紙箱やラベルにプリントされていることも。 ●MfS / Stasi >  Ministerium für Staatssicherheit 映画などのイメージもあって、知名度が高い(?)旧東ドイツの秘密警察、シュタージ。MfS – Ministerium für Staatssicherheit (国家保安局)となります。 この「国家保安」というドイツ語のスターツジッヒャーハイトを略しての通称がシュタージ。 局には直接所属せずにスパイとしてなんらか諜報活動に関わっている人はIM イーエム、と呼ばれます。このInoffizieller...
出典: © Aus Liebe/Facebook

シュトレン、クグロフ、魔女の家……贈り物にもぴったりな本格ドイツ菓子の店

今回はおなじみサンドラ・ヘフェリン(Sandra Häfelin)さんが、とっておきのスイーツが買えるお店をご紹介してくれました。
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