男女平等度を示す「ガラスの天井指数(Glass-ceiling Index)」。2018年度の調査によると、29カ国のうち日本はワースト国2位の28位。意外なのはオーストリアの18位、ドイツの20位、スイスの26位というドイツ語圏の芳しくない結果。

これは英エコノミスト紙がOECD加盟国やEU委員会などの機関から収集した情報に基づき毎年発表している調査で、女性の労働環境を総合的に評価するものだ。

以下、全10項目にわたる評価指針に基づき、ドイツ、スイス、オーストリア、日本の4カ国の比較をしてみよう。

λ高等教育を受けた女性の比率
出典: Pixabay CC0

ドイツ(27位):男性より−6.1ポイント
スイス(29位):男性より−9.5ポイント
オーストリア(25位):男性より−1.6ポイント
日本(23位):男性より−0.3ポイント

スイスは最下位、日本は意外にも4カ国の中では最上位・・・とはいえ全体から見れば4カ国揃ってワースト10に入っている。

労働力率
出典: flickr/Yorbasa Fotografie CC BY-ND 2.0

ドイツ(10位):男性より−8.6ポイント
スイス(11位):男性より−8.7ポイント
オーストリア(12位):男性より−9.0ポイント
日本(26位):男性より−17.3ポイント

ドイツ、スイスは、上の高等教育では最下位を争うが、労働力率ではずっと上位に上がる。それに対して日本はここでも順位が低い。

男女の賃金格差
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ドイツ(18位):男性より−15.7%
スイス(21位):男性より −16.9%
オーストリア(22位):男性より−17.0%
日本(29位):男性より−25.7%

日本は最下位。4カ国の中では一番良いドイツでさえ18位と、意外にも賃金格差が大きいことがわかる。

管理職に就いている女性の割合
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ドイツ(21位):29.3%
スイス(9位):35.9%
オーストリア(18位):31.9%
日本(29位):13.0%

日本は最下位。スイスは9位と健闘している。

役員職に就いている女性の割合
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ドイツ(18位):20.9%
スイス(17位): 21.3%
オーストリア(20位):19.2%
日本(29位): 5.3%

日本は最下位。あとの3カ国も似たり寄ったり。

GMAT(経営大学院の入学適正テスト)女性の受験者率
出典: flickr/Colin Mutchler CC BY 2.0

ドイツ(18位):33.8%
スイス(6位):28.9%
オーストリア(16位):34.4%
日本(29位): 21.5%

日本はここでも最下位。「高等教育」では最下位だったスイスが6位、経営志向のある女性が多いということか?

国会における女性の割合(女性の議席数)
出典: Wikipedia CC BY-SA 3.0 

ドイツ(16位):30.7%
スイス(13位):32.5%
オーストリア(12位):34.4%
日本(29位): 10.1%

日本はまたしても最下位。 公平な議論のためにもせめて他3カ国くらいの割合(30%以上)は望みたいところ。

保育費(平均所得に占める保育費の割合=負担の少なさ)
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ドイツ(4位):5.4%
スイス(28位):46.6%
オーストリア(2位): 3.1%
日本(19位):20.9%

オーストリアがダントツ2位、ドイツも4位と保育費についてはこの2国が恵まれているようだ。日本はやや順位が上がって19位、スイスが一気に28位に落ちる。女性の労働力率は比較的高いスイスだが、保育費が所得の半分近くを占めるようでは、育児との両立は難しそうだ。

母親の有給産休
出典: flickr/mrhayata CC BY-SA 2.0

ドイツ(6位):42.6週間相当
スイス(26位):7.9週間相当
オーストリア(4位): 51.2 週間相当
日本(9位):35.8 週間相当

スイスは26位。やはり子どもを産むと、スイスでは急に働きにくくなりそうだ。オーストリア、ドイツも上位で健闘、日本もその他の指数に比べると産休については順位が高い。

λ父親の有給育児休暇
出典: flickr/Yoshihide Nomura CC BY-ND 2.0

ドイツ(9位):5.7週間相当
スイス:なし
オーストリア(7位): 6.9 週間相当
日本(1位): 30.4 週間相当

スイスは「なし」! 母親だけでなく父親に対しても、スイスは育児との両立を前提としていないようだ。また、他の指数では最下位を争う日本が、ここでは一気に「1位」?! このアンバランスはどういうことだろう・・・

以上、女性の働きやすさの評価において、日本はOECDの平均値に対してかなり低いところにいる。しかしドイツやオーストリア、スイスもそれほど良いとは言えない。

「仕事もしたいし子育てもしたい」という女性にとっては、ドイツ語圏の中ではオーストリアが最善の環境と言えそうだが、世界的に見ると、女性が最も働きやすいのは、スウェーデン、ノルウェイ、アイスランド、フィンランドなどトップ4を占める北欧の国々のようだ。