木を切り倒し、家の前に立てて愛の告白? ドイツ人の愛のかたちを伝える、怒涛の恋愛ドイツ語! その2

愛の告白には、木を切り倒して……なんて激しい風習もあるドイツ。そもそもドイツ人がパートナーを選ぶとき、何がポイントとなるのでしょうか? 女性にとって大切なのは、パートナーがユーモアなこと!男性はどちらかというと外見重視の傾向があるのは世界共通でしょうか?! 今回は、案外知られていない?「ドイツの愛のかたち」のドイツ語、第2弾です。

伝統的な告白編:
出典: ©河内秀子
☆Maibaum > マイバウム(5月の木)

ドイツ西部、南部には、マイバウム(5月の木)というものがあります。5月1日に村や町の中心にある広場に建てて、飾り付けをして春を祝うのですが、地方によっては愛を告白する“手段”として使われることもあるそうです。

私が聞いたのは、南部ドイツのプファルツ地方でしたが、5月1日の前夜、若い独身男性が、ハート形の板に好きな子のイニシャルを彫ったものをマイバウムに付けて、その子(もしくは彼女)の家の前に立てかけるんだとか。人気がある子だと、ライバルに盗まれてしまうこともあるそうで、「夜通し見張ったよ」と語っておりました。で、結果はどうだったのか……?

さて、前回出てきた「die magischen drei Worte 魔法の3つの言葉」。イッヒ・リーベ・ディッヒ だけでなく、「Ich bin Schuld(わたしが悪かった)」とか「Morgen ist Freitag(明日は金曜日だ!)」というバリエーションもあります。

「Ich bin Schuld(わたしが悪かった)」は、けんかになるとドイツ人が譲らない言葉。魔法力は絶大なのに、この言葉がなかなか出て来ないんですねー。ベルリンの語学学校では、Ick liebe dir というベルリン訛りも習いました。多分、ベルリン訛りで最も有名な言葉ですね。

ラブラブ編:
出典: ©河内秀子
☆Wolke 7(ヴォルケ・ジーベン)>7番目の雲、☆skyen >スカイする

さて愛の告白をした後は、ラブラブ期へ突入。ふわふわ天にも昇るようなこの気持ちのことを、ドイツ語だと「7番目の雲」といいます。最近の若者言葉だと、skyen。空(スカイ)にも昇るような、、、。ここでの「雲」は天国をさします。日本語でも、「天にも昇る」と言うので、その感覚は全世界共通なんだな〜と。

7という数字は、空に7つの階層があるから、とか天国が7つの階層に分かれているから、とか諸説あるのですが、空のてっぺん!限りなく最高!ということで、7番目、なんですね。英語だと「on cloud nine」で、9番目だというから面白い。画像はベルリンで2017年に開催された国際園芸博覧会に合わせてオープンしたパノラマカフェの「ヴォルケ・ジーベン」。

ダーリン編:
出典: ©河内秀子
☆Schatzi >宝物ちゃん

ダーリン! Liebling! と実際に言っている人を、まだ見たことないんですが、、、。「宝物ちゃん」はあるかな? 恋人同士での呼び名で最も多いのは「宝物ちゃん」”Schatz”, “Schatzi” oder „Schätzchen”。次いで、「Hasi うさぎちゃん」、「Bärchen くまちゃん」、「Mausi・Mäuschen ねずみちゃん」 などだそうです。

そういえば、愛猫に「ねずみちゃん」という名前を付けている人がいましたが、、、。「猫可愛がりする」という表現が日本語にはあるのに、ドイツ語では「猫ちゃん」という呼び名はあまり聞かないのが不思議です。

結婚編:
出典: ©河内秀子
☆Junggesellenabschied ・ Junggesellinnenabschied >独身最後の夜を過ごすパーティ

ラブラブ期を経て、結婚へ。(結婚と言う形が、もちろん恋愛の最終的なかたちではないですが!)さて、ここ数年ドイツ中で爆発的に人気なのが、この「Junggesellenabschied」、略してJGA!いわゆるバチェラー・パーティです。辞書に載っていなかったのは意外でした。独身男性や女性が、同性の友達と集まって、独身最後の夜を祝います。たいていは、お揃いのメッセージ入りTシャツだの天使だのの仮装をして、飲んで、馬鹿騒ぎをします。

出典: ©河内秀子

男性の場合は、道ゆく人たちに売れなそうなものを売りつけて、お金を集めて花嫁を迎えに行くというのが定番の習慣。「僕の足を脱毛しませんか〜。1ユーロでいいですよ!」と、手に脱毛テープを押し付けられた時には、丁重にお断りしましたが(笑)

例年増え続けるこのパーティ、あまりに傍若無人なので、最近ではビアガーデンなどでは立ち入り禁止の看板をかけているところもあります。

☆Liebestöter >愛を殺すもの
出典: © Ebay

「愛を殺すもの」の代表的な格好が欲情も一気に冷める下着類。長袖シャツ&股引コンビネーション姿とか、白ブリーフに靴下姿とか。確かにこんな格好を見てしまったら、長く温めてきた恋愛感情も一瞬にして冷めてしまいますよね。見た目だけでなく、それまで抱いていたイメージが崩れ、幻滅してしまうほど嫌な言動や癖もLiebestöterと言います。日本語の「100年の恋も冷める」の感覚に似ています。

極寒のドイツ、股引も履きたくなりますが、脱ぎ着は女性のいないところでお願いしたいものですね。股引で愛が殺されて離婚……という人はいないのでしょうが、関係がこじれた時には、ドイツ人は「Paartherapie (カップルセラピー)」に通うことが多いです。

☆Ehe für alle >全ての人に、結婚を!
出典: ©河内秀子

2017年6月30日に、ドイツでは同性婚の合法化が決まりました。「Ehe für alle」(全ての人に結婚を!)というスローガンのもと大規模なキャンペーンが行われ、投票が行われました。YESが393票、NOが226票で可決!

実のところメルケル首相はNOに投票したらしいのですが、無事に可決しました!ベルリンにいると、いままでそもそも同性婚がOKじゃなかったの?と不思議なくらいですが、同性婚に向けての動きはハンブルクが皮切りで、1999年、登記所で同性カップルにも結婚に準じた関係を結ぶことが許可されたそう。
合法化されて初の同性カップルの結婚が10月にベルリンで行われました!1979年からカップルだった2人が、満を喫しての結婚!よかったですね。

私事なのですが2017年夏に結婚いたしました!同居生活10年近いので、いまさら感いっぱいだったのですが…。結婚前の日曜日の午後、友達が突然やってきて、「誘拐します!」と言われて連れ出され、お風呂から出たばかりの状態で、その辺の服を着て慌ててでかけた私。

内緒で独身パーティを企画してくれていたのです。お祝い感のない格好をした私でしたが、そんなことも忘れてしまうぐらいの感動と感激に包まれた夜でした。ここ数年一大結婚ブームのベルリン。挙式の予定が決まるまでにも紆余曲折あり、、、という話は、いつかまた!

執筆者:河内秀子
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』『ミセス』、『Young Germany』『Think the Earth』などでもベルリンやドイツの情報を発信させて頂いています。
Twitterで『#一日一独』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。