薬には頼らず自己治癒力を高める

寒さがますます厳しくなる年明けの今日この頃、日本の皆さまは体調を崩していませんか?こちらではあちこちで咳をしている人を見かけます。色々と違いのある日本とオーストリアですが、風邪への対策にも違いがあるんです。そこで今回はオーストリア流風邪の治し方についてご紹介します!

日本なら風邪をひいたら比較的すぐに薬を飲んで症状を和らげようとするのではないでしょうか。オーストリアでも風邪薬は市販されていて、簡単に手に入るのですが、薬を飲むことより、風邪をひいてまず真っ先にすることと言えば“Tee trinken!”- お茶を飲むこと!

筆者が風邪をひいて病院に行った時にも「家にお茶はある?お茶を飲んで身体を温めれば治るから」 と言われ、処方されたのは風邪用のお茶のみ。

けっこうな高熱でフラフラしながら病院へ行ったのに、風邪用のお茶を飲んで寝ていれば治ると言われた時には、なんだか納得のいかない気持ちでした(笑)

さて、風邪用のお茶には色々ありますが、オーストリアで使われる代表的なものがホルンダー(エルダーフラワー)ティー。

出典: Obi

世界最古のハーブとも言われる薬草で、風邪のみならずインフルエンザ、呼吸器系疾患、排泄促進・抗ストレスなど、その幅広い効果から「万能の薬箱」とも呼ばれているハーブです。最近では、日本でも知られるようになり、手に入るようになりましたよね。

そこに、免疫力を高める効果がある蜂蜜を入れて飲むのがオーストリア流。その他にはビタミンCが豊富なクランベリーティーもよく飲用されています。発汗作用も期待できることから高熱用薬用ティーの代表格です。

薬用ティーを飲んだ後に、風邪の病人に運ばれてくる食事は決まってこれ。

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細いパスタの入ったチキンスープ。コンソメの優しい味なので食欲がない時にもお腹に優しく、身体も温まり、納得のいく病人食。

そして、その次に登場するのがラスク、ドイツ語ではZwieback(ツヴィーバック)。

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消化がよく栄養価に富んでいて、病人食として打ってつけと考えられていて、このラスクをお茶やスープに浸して柔らかくして食べるのです。筆者も胃腸炎を患った時、苦い薬用ティーに浸されたラスクを出されたことがあります。苦いお茶を吸いたくったラスクはあまりにも苦くて口にできず、最後には脱水症状に陥ってしまいました。スープにラスクはまだしも、薬用ティーにラスクはちょっとキツイです。

最後に忘れてはならないのが体を温めるために病院で処方される入浴剤。

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オーストリアの医療機関では薬用茶だけでなく薬用入浴剤も処方します。例えばこれは夫におできができて、化膿して腫れ上がり高熱まで出たときに処方された皮膚疾患用の入浴剤。

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熱がいっこうに下がらないので患部を切除するか抗生物質を処方してもらおうと病院へ連れて行ったのに、処方されたのは膿だしに効果があるらしいこの入浴剤だけ。「3日使ってよくならなかったらまた来てね」と言われた時には呆然。結局その日のうちに更に悪化してしまい、切除することになりましたが…。

このように化学薬品にはなるべく頼らず、ゆっくり時間をかけて自分の免疫力で治そうとするオーストリアと、とにかく薬で早く症状を抑え込もうとする日本。オーストリアの風邪の治し方は時間は少しかかるけど身体に優しい治療方法です。

以前筆者が熱を出して病院へ行った時、お医者さんから「疲れが溜まっての発熱だろうから一週間休んで体をゆっくり休めてください」と言われ、インフルエンザでもない普通の風邪なのに一週間の病欠指示が書かれた診断書を出された時にはビックリ! 真っ先に心配したのは有給休暇のことでした(オーストリアでは基本的に有給休暇は5週間)。

日本で働いていた時は動けるのにただの風邪で有給を使ってしまったらもったいないと、出社していたので。しかし、こちらでは病院から就労不可能証明書(Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung) を発行してもらい、職場へ提出すれば、有給休暇からは差し引かれることなく、医者が就労不可能と判断した日数だけ病欠として休むことが出来ます。長く休んだからといって同僚達から冷たい目で見られることもありません。

こうした労働環境が、身体に優しい自然療法的な風邪の治療法を可能にしているのでしょうね。今回はオーストリア流の風邪対策についてご紹介しまたしたがいかがでしたか。お茶や入浴剤についてはスーパーやドラッグストアでもたくさんの種類が売られているのでこちらに来る機会がありましたら是非試してみてはいかがでしょうか。お土産にもおすすめです!

執筆者:Obi
オーストリア西部のチロル地方在住。「地球の歩き方」オーストリア&チロル特派員を担当。2014年から住んでいるものの、まだまだこの国には知らないことだらけ。そんなオーストリアやチロルの魅力を発信していきます。

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