「クリスマスきゅうり」と「熱いアザラシ」でドイツのクリスマスを祝おう!? − クリスマスに使える(?)ドイツ語!

もういくつ寝ると、、、クリスマス〜! 12月に入ると、ドイツ各地でクリスマスマーケットが開催されます。ドイツ全国の総数ははっきりしていませんが、ベルリン市内だけでも90か所あるとか。

出典: flickr/visitberlin CC BY-NC-ND 2.0

ふだんは同僚と仕事帰りにお酒を飲む……なんてことをしないドイツ人でもこの時期だけは別で、「クリスマスマーケットでホットワインを飲もうよ!」なんてお誘いも。なんだか、みんなそわそわして仕事が手についてないんじゃない?と思うこともあります。

今回はドイツのクリスマスが、さらに楽しくなる(かもしれない)「クリスマスのドイツ語」です!

☆Weihnachtsgurke ヴァイナハツグルケ > クリスマスきゅうり
出典: © 河内秀子

クリスマスにきゅうり?何それ? 実はドイツ人もあまり知らないこの“クリスマスきゅうり”。ドイツの伝統(!)としてアメリカで広まり、今度はドイツに逆輸入されて、今度はドイツ人が「ドイツの風習らしい」という、謎のねじれ現象が起きているんです。

私が初めてこの「クリスマスきゅうり」を見かけたのは、5年くらい前のニュルンベルクのクリスマスマーケットでした。ガラス製のオーナメントを売っているお店で、サンタと鳥に混じってキュウリの姿が。

お店の人になぜキュウリ?と聞いたところ「なんかねえ、ここ数年アメリカからのお客さんが『ドイツ伝統のクリスマス・キュウリが欲しい』って言うからさ、最近作り始めたのよ」と。え、それ全然伝統じゃないのでは……?

出典: Facebook/Christbaumschmuck

今年は数名のドイツ人が「“クリスマスきゅうり”、知ってる〜?ツリーに1個だけぶら下げておいて、見つけた人が一番最初にプレゼントを開けられるのよ!」と嬉しそうに教えてくれました。

デパートなどでも、今年は“クリスマスきゅうり”の目撃率が高かったように思います。こうやって伝統(?)は作られていくのかもしれませんね。

☆Schreistollen シュライシュトレン > 叫びシュトレン
出典: 河内秀子
☆Flüsterstollen フリュスターシュトレン > ささやきシュトレン
出典: © 河内秀子

ドイツのクリスマスの伝統菓子といえば、シュトレン! バターたっぷりのイースト生地にドライフルーツを混ぜ込み、さらに溶かしバターとグラニュー糖をかけて、雪の様に粉砂糖をまぶした、濃厚なお菓子。

最も有名なのはドレスデンの“クリストシュトレン”。たっぷり入ったレーズンが特徴で、2kgのシュトレンに対して、少なくとも465gのレーズンを入れることが義務付けられています。

シュトレンをスライスすると断面にはレーズンがぎっしり! ……のはずが、レーズンの量が少ないのか、上手にレーズンが混ざっていないのか、シュトレンの端っこに少ししかレーズンが入っていないことがあります。
そういったシュトレンのことを「シュライシュトレン(叫びシュトレン)」と言います。レーズン同士が、叫び合わないとお互いの声が聞き取れず、コミュニケーションが取れない、さみしいシュトレン。

逆に、レーズンがみっちり詰まっていて、まるで耳を寄せ合って囁きあっているような状態のものを「フリュスターシュトレン(ささやきシュトレン)」と言うのです。

なんだかちょっと可愛いこの言い回し。ドレスデンのパン屋さんで耳にして以来、レーズンいっぱいのシュトレンを見るたび、まるでレーズンの囁き声が聞こえてくるようです。

出典: © 河内秀子

それはさておき、Stollen の発音を日本語にした場合、oにアクセントがつくのでシュトーレンと聞こえないこともないですが、この発音はご法度です。ドイツ人にとって「シュトーレン」だと語感が「盗む」に似ていて、お祝いムードではなくなってしまうのです。Twitterでは、ハッシュタグ「#stollen発音ポリス」まで存在していて、日本で出回っている「シュトーレン」と書かれたシュトレンを報告する巡回パトロール的な動きまであるので、くれぐれも「シュトレン」の発音にはご注意を!(笑)

☆ Winzerglühwein ヴィンツァーグリューヴァイン > ワイン農家のホットワイン
出典: © 河内秀子

シュトレンとならんで、ドイツのクリスマスに欠かせないのが「グリューヴァイン」と呼ばれるホットワイン。ドイツ人曰く、じっと立っていられないほど寒い日に、クリスマスマーケットの屋台で手を温めながら飲むのが、最高だとか。
だいたいが赤ワインをベースにシナモンなどのスパイスや砂糖を加えたもの。屋台に限らずスーパーなどでも売られていますが、安いものは渋みがあったり甘すぎることも。

出典:  flickr/Carolina Georgatou CC BY-ND 2.0

そういった安いグリューヴァインに対抗するように、ここ数年、クリスマスマーケットで見かけるようになってきたのが、この「ヴィンツァーグリューヴァイン」。ワイン農家のホットワイン、という意味で、ワイン農家が自前のワインを使って仕込んだ、できたてものをさすようです。

ポイントは、甘口ワインを使って砂糖を(ほとんど)加えないこと。柑橘類の皮を加え、スパイスだけでなくハーブなども加えてフレッシュな味わいに仕上げています。お値段は少し高めですが、見かけたらぜひお試しを♪

☆ Heißer Seehund  ハイサー・ゼーフント > 熱いアザラシ
出典: © 河内秀子

……なぜアザラシが熱いのか? 実はコレは上記のグリューヴァインのアレンジ。北ドイツでよくみかけます。白ワインをベースにレモンの皮とシナモンスティックを浮かべ、砂糖を少々。レーズンを入れたところが、アザラシの目っぽいのか?名前の由来はよくわかりませんが、なかなか美味しいです。

☆Weihnachtsbaumtrichter ヴァイナハツバウムトリヒター > クリスマスツリー大型じょうご
出典: © 河内秀子

ドイツのクリスマスツリーは、生木です。12月頭くらいになると街のそこここにツリー用のもみの木を販売するスタンドが登場します。もしくは、自分で切りに行く! 郊外のクリスマスツリー畑を訪れ、いい枝振りのツリーを吟味し、ノコギリで切り出すんです!

このような畑や、スタンドに必ず置かれているのがこの「クリスマスツリーじょうご」。2メートル級のツリーはそのままだと持ち運びが困難なため、この大型じょうごを使ってパッキングするんです。ツリーを、にゅるーっとこの筒の中に通すと、反対側からネットに包まれた細長いツリーが出てくると言う仕組み。

ちなみにこの生木のツリー、翌年1月頭に処分するのですが、その方法がなかなかワイルド。ただ回収日の前日に道に捨てるんです。重いし階段に葉が落ちるからと、たま〜に窓から投げ落とす人もいたりして、、、。

ベルリンでは、1月はいつまでも回収されないままに打ち捨てられたツリーがそこら中にあって、ちょっと悲しい気分になります。

ちなみに、上記の動画はIKEAの年始「クヌートセール」のCM。北欧にはツリー飾りなどを片付ける、聖クヌートの日という祝日があるそうなんですが、IKEAではこれにひっかけて「ツリーを捨てて新しいものを買おう!」と「クヌート・セール」を開催。IKEAでは、毎年クリスマスツリー投げ選手権を開催しています!(2018年は、1月6日開催予定)

さて2017年もあと少し。今年は、この連載で「Wörter aus der DDR(旧東独の言葉)」を書かせていただけて、とても楽しかったです!

まだまだ東ドイツネタ、ドイツ語ネタ、ドイツのご飯ネタは尽きません。Facebook、twitterなどで、引き続きぜひ、情報交換できたら嬉しいです。ではみなさま、Frohe Weihnachten und einen guten Rutsch ins neue Jahr!!  メリークリスマス&よいお年を!

執筆者:河内秀子
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』『ミセス』、『Young Germany』『Think the Earth』などでもベルリンやドイツの情報を発信させて頂いています。
Twitterで『#一日一独』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。