温かいご飯にチョコレートはきつい

皆さんはオーストリアの食べ物というと何を思い浮かべるでしょうか。シュニッツェル?ソーセージ?ザッハトルテ? 美味しい料理やデザートがたくさんあるオーストリアですが、筆者が4年間住んできて唯一食べられなかったのがミルヒライス! その名の通り牛乳で炊いたご飯のこと。

こちらに住んでしばらくは義両親と食事をしていたのですが、ある日義母から「今日は甘い物を食べたくなったわ!ご飯を食べるあなたなら好きだと思うわ。ミルヒライスっていうんだけどね。食べたい?」と聞かれ、ご飯は好きでも…と思いつつ、断る勇気もなく“Ja”としか返答できず…。

出典: flickr/Florena_Presse CC BY-ND 2.0

ミルヒライスの存在自体は知っていたので、米を牛乳で煮込んだミルク粥なら牛乳の匂いさえ我慢すれば、なんとか大丈夫かもと思っていました。ところが・・・、出されたミルヒライスの横に置かれたチョコレート、砂糖、シナモンの皿を見て愕然…。

そして義母は「そのまま食べても美味しくないわよ!もっと甘くしなきゃ!」と、私に有無も言わさず、ミルヒライスの上に次々とチョコレートや砂糖を投入。牛乳の匂いだけだったミルヒライスから、ぽわ〜と甘ったるい匂い(もはや臭い!?)が込みあがり、何故あの時断らなかったのかと激しく後悔…。

その時のミルヒライスがこちら

出典: Obi

チョコレートと砂糖を混ぜた直後に撮影した写真なので、入れ立ての様子が伝わらないかもしれませんが、この後更に「まだ足りない!」と、追加チョコレートとバターをかけられました・笑

見た目や先入観で判断してはいけないと言い聞かせて、意を決して食べてみましたが、やはり米とチョコレートや砂糖の甘さと牛乳と、そしてバターという、未知のコンビネーションが混ざり合った匂いはきつい…!

口に運ぶたびに小学生だった頃、給食でご飯が多すぎて、ご飯を無理矢理牛乳で流し込んで食べていた記憶、こぼした牛乳を雑巾で拭いた時の記憶がフラッシュバック…!

私の顔色がよっぽど悪かったのか、義父が「まずいのかな?残してもいいんだよ」 と言ってくれたのにまたノーと言えない日本人気質が発動して「いえ!大丈夫です!」 と言ってしまい、吐き気と戦いながら何とか完食…。

どうやらオーストリアでは、ミルヒライスはお米が苦手な子ども向けに作るものらしく、夫も義妹も大好きなメニューの一つで、私が食べたと知るや「自分も食べたかった!」 とねたまれました。

こんな感じで初ミルヒライスは最悪な思い出になったことにも懲りず、温かいミルヒライスではなくスーパーで売っている冷たいミルヒライスならいけるのでは?と思い、再挑戦!

出典: Obi

値段は90セント前後。何も入っていないプレーンのミルヒライスを探したのですが、この日はチョコレート入りとシナモン入りしかなく、チョコレートが入ったものを選択。

義母のミルヒライスにもチョコレートが入っていましたが、温かいミルク粥にチョコレートが加わった瞬間のニオイはとてつもないものだったことを思い出します…。ただ今回は冷たいミルヒライスなのでデザート感覚で食べられるかもしれません!

ヨーグルトのような見た目で、香りもカスタードのようで美味しそうではあります。

出典: Obi

しかし底にはチョコ…。 恐る恐る口に運んでみたところ…

あれ、そこまでマズくない…?食べられるかも…!!甘いツブツブのプディングという感じです。

食感がお米なのが少し気になるものの、予想以上に美味しい!チョコ入りはかなり甘めなので、もしこれが何も入っていないミルヒライスならもっと食べやすいかと思います。さらに、冷たくてニオイも無く、チョコ以外入っていなかったのが良かったのかもしれません。

義母のように熱々のミルク粥にチョコ、シナモン、砂糖、バターをどっさりかけられると、日本人だったらやはりちょっと吐きそうになるでしょう…。

主人や義妹にとってミルヒライスは幼い頃を思い出す「懐かしい味」。日本のお米のように風味や自然の甘みがない、何の味もないこちらのお米だからこそ、お米をデザート風に変えるという発想が生まれたのでしょう。

出典: Obi

そして、炭水化物のお米を使ったミルヒライスは、オーストリアの子どもたちに“おやつ”や“デザート”としてふるまわれています。母親が作ってくれたミルヒライスは、子供達にとってまさに「懐かしい味」なのです。ミルヒライスへの理解は進んだものの、また食べたいかと聞かれたら今度ははっきりNein,Danke!と答えますが…笑

日本人にとっては珍しいミルヒライスが気になっている方、市販のものは食べやすいのでオーストリア人のなつかしの味を試してみてはいかがでしょうか!

執筆者:Obi
オーストリア西部のチロル地方在住。「地球の歩き方」オーストリア&チロル特派員を担当。2014年から住んでいるものの、まだまだこの国には知らないことだらけ。そんなオーストリアやチロルの魅力を発信していきます。

連絡はtwitterからお願いします。