サンドラの日独比較 Vol.9
お泊りは・・・「ご実家でどうぞ」

ラブホが多く建ち並ぶ日本。初めて日本を訪れたドイツ人をラブホ街に連れていくと、誰もが目をまん丸にして驚きます。というのも、ドイツにはラブホがないからです。

出典: flickr/Matt Murphy CC BY 2.0

では、ドイツの恋人たちの「お泊り事情」はどうなっているのでしょう…?もちろん成人になって一人暮らしをしていれば、お互いの家を行き来してお泊りします。これは日本でもそうかもしれませんね。

でも!ドイツの場合、10代や20代の人が「実家」に住んでいる場合、親のいる実家に公然とお泊りするんです。真夜中に秘密で家に忍び込んだり、「親が留守中の家」(これをドイツ語では“sturmfreie Bude“といいます)で親には内緒で二人で時間を過ごす、ということもないとは言えませんが、たいていの場合、親も公認で堂々と実家にお泊りしているカップルが少なくありません。実家住まいの10代の若者たちにとって、実家もデートの場というわけです。

出典: © Fotolia

例えば、私の友人のスザンネは14歳の時、16歳のトビアスと付き合っていて、毎週末、彼の家に遊びに行っていました。トビアスの母親はいつもスザンネを大歓迎。でも、最初に遊びに行った日は二人をリビングに座らせ、「スザンネはまだ14歳だから性行為だけはダメよ。それはあと少し待ちなさいね。」と二人にアドバイスをしたのだそう。そして二人ともこれを守ったのだとか(笑)

でもこれが16歳、17歳となると、どの親も若者二人がお泊まりで何をしようと干渉してくることはありません。ドイツの親は「未成年同士の恋愛」に寛容なのです。なので「恋人」を両親に紹介する人も多いんです。娘や息子の恋人と面識さえあれば、親も安心してくれるところがあります。逆に、紹介がないと、大人たちは「我が子は親にも紹介できないような悪い人と付き合っているのではないか」と心配になるようです。

日本人は、ここまでオープンなドイツ人の「性のあり方」にビックリしてしまうようですが、ドイツの親は、子供達に隠れて色々とコトを進められるより、自分たちもある程度、娘や息子の恋人のことを把握して、その中で子供達に成長していってもらいたいと考えています。

出典: © Fotolia

我が子が選んだ恋人を家族同様に可愛がってくれる親もたくさんいて、一緒に食事や家族旅行に誘ってくれる親も。なお、ドイツでは10歳ぐらいで、性教育や避妊用具について学校で勉強します。16歳ぐらいになると、家庭での性病や避妊具に対する具体的なアドバイスが始まります。

出典: flickr/Amber McNamara CC BY-NC-ND 2.0

というのも、ドイツの社会は、性にオープンでありながら、『望まぬ妊娠』に対してとてもシビアなんです。中絶はあり得ない、あってはならない、と考える人がほとんど。キリスト教の影響なのでしょうね。

そういった背景から、学校でも家庭でも、避妊を含めた性教育さえキチンとしていれば、子供達は責任ある行動をとるだろうから、性行為自体を大人が取り締まる必要はないと考えるドイツ人がほとんどです。

出典: flickr/Franceso Sciuto CC BY-SA 2.0

ドイツ特有のある種の「合理性」がここにも表れている気がしますよね。皆さんはどう考えますか?

続きは、新刊『男の価値は年収より「お尻」!? 』をご覧くださいませ。

サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフはナニジン?」、「ハーフといじめ問題」、「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ) など計11冊。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。