ラクリッツ(Lakritz)はドイツやスイス、オランダなど、ヨーロッパ各地で人気の嗜好品。プラスチックのような黒々とした見た目が特徴で、日本人の口には合わないともっぱらの評判だが……。

ラクリッツの原料は、ドイツ語ではエヒテス・ズュースホルツ(Echtes Süßholz)と呼ばれるスペインカンゾウという植物の根だ。

スペインカンゾウの根から採れる成分は、抗酸化・抗ウイルス作用のあるグリチルリチンを含んでいる。古代ローマの時代から、咳や胃炎、肝臓病によいとされ、すりおろしたスペインカンゾウをお茶として飲む習慣もあったという。

出典: Wikipedia

ラクリッツという名は、スペインカンゾウのスウェーデン語(lakrits)やデンマーク語(lakrids)に由来する。現在では、キャンディ状に加工されたものが口にされることが多い。

しかし、日本人にとってラクリッツは漢方薬のようなゴムのような(!)独特の味わいで、苦手とする人がほとんど。嬉しそうに口に放り込むヨーロッパ人の姿を見て、首を傾げたことがある人もいるかもしれない。

出典: Wikipedia

ラクリッツを作るには、まずはスペインカンゾウの根を洗って皮をむき、乾燥させてから擦りおろし、水を加えて煮込む。すると、黒くどろどろとしたペースト状のものができあがる。

輸送しやすくするため、それを5kgほどのブロック状に固める。各工場では再び水を加えて塊を溶かし、砂糖や小麦粉などを加えて商品に加工する。この動画ではそのプロセスを見ることができる。

今日では、ノズルから押し出して作られる“かたつむり型“がとくに人気。

出典: dasnaschglas.de

この比較的やわらかいタイプのラクリッツには甘みが加えられていて、子どもたちも大好き。色とりどりの砂糖のペーストとともに加工された様子は、知らない人から見ればまるで消しゴムかなにかのようだが……。

出典: lakritzplanet.de

型に流し込んで固め、輝きを出すために蜜蠟でコーティングした、飴のようなタイプのラクリッツもある。黒猫形がなかなかオシャレ?

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ドイツでは、ラクリッツは南部よりも北部で好まれる傾向にある。南北の間には、ほぼマイン川の流れと一致する「ラクリッツ赤道(Lakritz-Äquator)」が存在するというから興味深い。

こちらは北部で非常に愛されているパイプ型のラクリッツだ。

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ただしラクリッツにはいくつかの難点も。

・タバコの味を良くするために使われることもあるが、ニコチンへの依存度をより高めてしまう。

・血圧や、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの値を上昇させることがあるので、とくに妊娠中の女性は注意が必要。

・塩化アンモニウムを含むため、大量に食べると体内の塩分調節機能に影響を与え、胃を刺激し嘔吐などの症状が起きることも。

子ども向けの商品は、純粋なラクリッツ成分は2%程度とかなり低めに抑えられているので心配する必要は基本的にはないが、食べ過ぎはご法度だ。