「ホッチキス」、「サランラップ」、「ウォッシュレット」、「シャチハタ」、「QRコード」など日本にも元々は商品名だったものが普通名詞化したものがある。さて、ドイツにはどのようなものがあるのだろうか。

1. Tempo(テンポ)=ポケットティッシュ

1929年、ニュルンベルク製紙連合会がドイツで初めてポケットティッシュを生産した。その名も「Tempo」。大量生産と大量消費で繁栄したアメリカ経済の影響を受けて、ヨーロッパ経済も好景気に見舞われていた1920年代後半、人々はステータスの一部として、鼻をかむ時、それまでのように布を使うのではなくテンポを使うようになった。

2. Tesa(テーザ)=セロハンテープ

スキンケア商品「ニベア」で有名なバイヤスドルフ社の姉妹企業が発売したセロハンテープ「Tesa」。1935年の販売開始当時は「Beiersdorf-Kautschuk-Klebefilm」(バイヤスドルフ・合成ゴム・接着テープ)という商品名で販売したが、売り上げはさっぱり。

そこで、1941年に商品名を「Tesa」に変更。打って変わって爆発的に売れるようになった。ちなみに「Tesa」という名前は、Elsa Tesmerという女性社員が苗字の最初の2文字「Te」と名前の下の2文字「Sa」をつなげて自分用につくったネーミング「Tesa」に由来する。時に名前の力は大きい。

出典: Wikipedia CC BY-SA 2.5
3. Leitz-Ordner(ライツ・ファイル)=レバーアーチファイル

1841年、発明家であるルイス・ライツ(Louis Leitz)が「書類をとにかく整然と整理したい」という欲望を満たすためにシュトゥットガルトで起業。何十年もかけて商品改良を重ね、1911年に現在の背表紙部分に穴があいたレバーアーチファイルの完成形を生み出した。整理整頓が大好きなドイツ人はこぞってライツ・ファイルを購入、一気に全国的に普及した。

出典: Wikipedia
4. Knirps(クニルプス)=折りたたみ傘

1928年にゾーリンゲンで考案されたドイツ初の持ち手収縮型折りたたみ傘「Knirps」。大ヒット商品となり、他社もこぞって「Knirps」の特許を使って収縮型折りたたみ傘を製造。こうしてKnirps(クニルプス)は「折りたたみ傘」を指す一般的な呼称となった。

出典: knirps.com
5. Edding(エディング)=フェルトペン

1960年にハンブルクで設立された会社Edding(エディング)が、フェルトペンを日本から輸入し、会社名と同じ「Edding」の名で売り出した。質の高い日本製の油性ペン「Edding」は、まず運送業界で重宝され、次第にドイツ全土で油性ペンのトップブランドとして知れ渡っていった。生産はいまなお主として日本で行われている。

6. Aspirin(アスピリン)=頭痛薬

日本でも有名な消炎鎮痛剤「Aspirin」、正式物質名Acetylsalicylsäure (ASS、アセチルサリチル酸)。1899年、ドイツの製薬会社バイエル社が世界で初めて人工合成に成功した医薬品だ。バイエル社は「Aspirin」という商標名を付け、国内外で販売を開始。瞬く間にドイツのみならず世界中で鎮痛剤のトップブランドとなった。

7. Fön(フェーン)=ヘアドライヤー

1908年、Sanitas社が「Foen」の商品名でドイツ初のヘアドライヤーを発売。実はこの商品名はフェーン現象を表すドイツ語「Föhn」に由来しており、まさにフェーン現象の熱風をイメージして名付けられた。市場にインパクトを与えたヘアドライヤー「Foen」は、ドイツの各家庭で使用されるようになり、ヘアドライヤーを表す普通名詞となった。

出典: Wikipedia CC BY-SA 3.0
8. Inbus(インブス)= 六角棒スパナ

「Inbus」とは、“Innensechskantschraube Bauer und Schaurte”の頭文字を取った略語。六角形の穴が空いたねじと、それを締めるドライバーのこと。1980年にノイスで設立されたBauer & Schaurte社が最初の発売元。しばしば「Imbus」と発音されることもあるが、それは誤り。

出典: Wikipedia
9. Einweckglas(アインヴェックグラス)=ガラス製保存容器

19世紀終わりに発案された、ゴムパッキンで密閉できるガラス製の保存容器。1900年設立のガラスメーカーJ. Weck社が商品化し、密閉型保存瓶の定番として広く知られるようになった。「食品を瓶詰めにして保存する」ことを意味する「einwecken」という動詞も生まれ、今では正式なドイツ語として認められている。そして、「einwecken」用に使用されるグラスのことをEinweckglasという。

出典: Wikipedia CC BY-SA 3.0
10. Thermosflasche(テルモス・フラッシェ)=真空断熱魔法瓶

グラス分野専門の発明家であるラインホルド・ブルガー(Reinhold Burger)が真空断熱魔法瓶を発明。1903年には特許を取得し、翌年には“Thermosflasche”の名を商標登録した。有名な「Thermos」シリーズは1920年から発売され、世界各地で飛ぶように売れた。ちなみにThermosは熱を意味するギリシャ語“Therme”に由来している。

いかがだろうか?「Tempo」や「Tesa」だけでなく、他の普通名詞化した商品名も日常会話でさらっと言えるようになれば、ドイツ通をさらにアピールできるようになるかも……?