この時期、市場やスーパーにうず高く積まれる白アスパラガス、シュパーゲル(Spargel)。人々が愛してやまないこの野菜の魅力とは?

1. 数々の呼び名がある
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シュパーゲルは古代ローマ時代から特別な野菜だった。中世後期までは貴族たちのための食べ物だったが、後年、多くの農家が作付けをはじめ、一般の人々も口にできるようになった。

いまなおシュパーゲルは「白い金」「皇帝の野菜」「食べられる象牙」などとも呼ばれ、ドイツ人にとってほかとは一線を画す野菜である。

2. 価格が高い
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シュパーゲルの一人前の目安は500gほどだが、スーパーマーケットでその量を購入すると、約3.5€(420円)支払う必要がある。「それほど高くないんじゃない?」と思うかもしれないが、ドイツの野菜はいずれも比較的安価。例えばキャベツは500gで0.5€程度なので、シュパーゲルは実に7倍の値段ということになる。

・収穫までに3年がかかる
・手作業で収穫しなければならない
・収穫時期が5、6月に限られる
などが高価格になる理由として挙げられる。

3. 外国人労働者の存在
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シュパーゲルの収穫はきつく、しかも年間を通して作業があるわけではない。ドイツ人の多くはそのような農作業を好まないため、主にポーランド人やルーマニア人たちの手を借りて収穫が行われている。

2017年からは、シュパーゲル農家が彼らに払う最低時給が8.5€と定められたため、今後はドイツ人たちも収穫に加わることになるだろう。

4. 世界中から輸入
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中国からペルーまで、世界のあちこちで栽培されたシュパーゲルのほとんどがドイツに輸入、消費されている。ドイツにおいても最大作付面積を持つ野菜がシュパーゲルで、年間113,000tがドイツ人のお腹におさまる。ひとりあたりざっと1.4㎏の量だ。

5. メディアでも礼賛
出典: © Bayerisches Staatsministerium für Ernährung, Landwirtschaft und Forsten

シュパーゲルがこれほど愛されるのには3つの性質が考えられる。もちろん美味であること、血液や腎臓への健康効果があること、そして低カロリーであること。雑誌やテレビも、毎年季節になるとこぞってシュパーゲルのレシピを紹介する。

ところが、ドイツ人たちはシュパーゲルを柔らかくゆで、大量のバターや、オランデーズソース(バター、卵黄、レモン果汁を使用したソース)、ハムなどとともに食べるのを好む。ゆですぎると当然その美味は失われるし、バターやソースは高脂質で血液に悪影響を与えるのだが……あまりそのあたりは気にならないようだ。

6. シュパーゲルのためのレストランがある
出典: © spargelrestaurant.de

時期になると、シュパーゲルレシピのみを提供する特別なレストランがオープンする。その他のレストランでも、季節限定のシュパーゲルメニューが用意される。

7. 日曜日はシュパーゲルの日
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多くのドイツ人たちは、週末、とくに日曜日にシュパーゲルを好んで食べる。ドイツでは伝統的に、日曜に特別な食事をとることが多く、かつては肉料理も日曜日にのみ食べられていたという。

農家は、土曜日にもっとも新鮮なものを店頭に並べられるよう、タイミングを合わせて収穫している。

8. シュパーゲル詐欺がある
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ドイツ産のシュパーゲルはもちろん新鮮で美味だが、より高値がつく。そのため、外国産の安いシュパーゲルを国産だと書き換えてしまう悪徳業者も存在する。バイエルン産のシュパーゲルがとくに好まれるが、バイエルン州はチェコとも国境を接しているため、チェコ産のシュパーゲルがバイエルン産として産地偽装されることもあるとか……。

9. 収穫体験ができる
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多くの農家が、シュパーゲルを自ら収穫できる体験コースを提供している。手袋と専用のナイフ、穴を再び埋めるためのシャベルを借り、自ら収穫したシュパーゲルはスーパーマーケットで買う価格の約半分。家族のイベントにも最適だ。