流線的なフォルム、自然との一体感、心安らぐデザイン――。スイスの「大地の家（Erdhäuser）」をご存知だろうか。
スイス人建築家ペーター・フェッチ（Peter Vetsch）が考案し、現在国内外に約100軒が建てられている「大地の家（Erdhäuser）」。『ロード・オブ・ザ・リング』に登場するホビット庄を彷彿とさせるファンタジックさだ（こちらはホビット庄の写真）。
「“地中に”暮らすのではなく、“地中と”暮らす」と、大地の家のコンセプトは、地面の上に建つ通常の住居とは大きく異なる。
従来の住居では、地面と家とが分離されたように建てられ、結果、暖かさや適度な湿度が保たれず、外壁などの耐久年限は短くなってしまう。しかし、この大地の家では、大地をまるで温かな毛布のように利用するので、寒さや風雨からしっかりと家が守られるのだ。
特筆すべきはその気密性。継ぎ目がほとんどないため、不快な隙間風をシャットアウトし、アレルギー物質などの侵入を妨げ、火事にも強い。
悪臭・騒音・震動被害などを軽減し、環境へ優しいのもポイントだ。まるで彫刻作品のような大地の家だが、地中に無理やり作るのではなく、傾斜や起伏などの自然の地形を利用し、掘り上げた土で屋根を覆うという建築方法が取られている。
個性的で快適、そしてエコな大地の家。スイスを訪れた際には、ぜひ見学してみたい建築のひとつだ。
