その流行ぶりは色鉛筆の生産が追いつかないほど。日々の心配事を忘れ心が落ち着くという、デジタル時代を生きる人々を癒す、新しい塗り絵の世界とは

子供の頃誰もが遊んだことのある塗り絵。それが今ドイツの大人達の間で注目されている。

大人の塗り絵(Adult Coloring)ブームはイギリスとアメリカからやって来た。スコットランド人ジョハンナ・バスフォード(Johanna Basford)が大人のための塗り絵本を発表したのが始まりだ。

話題の塗り絵本作家ジョハンナ・バスフォード

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出典: © Johanna Basford

彼女の塗り絵本『秘密の花園(Secret Garden)』、『ねむれる森(Enchanted Forest)』、『海の楽園(Lost Ocean)』の発行部数は、1千万部を超え、アメリカのベストセラーの頂点に立った。

ブームの火付け役となった『秘密の花園(Secret Garden)』

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出典: © Johanna Basford

塗り絵の魅力は、絵の初心者でも気持ち良く始められること。原画があるので、自分では絶対に描けない作品を生み出すことができる。何よりも、深く考えることなく電源を「オフ」にして、色を塗ることに没頭できる。リラックスするための作業としての塗り絵なのだ。

大人の塗り絵の作品集

原画は簡単なものから難しいものまで色々

塗り絵ブームにより、色鉛筆とフェルトペンへの問い合わせが殺到し、スタッドラー(STAEDTLER)、ファーバーカステル(Faber-Castell)、スワン・スタビロ(Schwan-STABILO)、 リラ(LYRA)など、ドイツの名だたる文具メーカーの生産が追いつかなくなる事態が発生した。土曜返上やダブルシフトで、なんとか需要に応えているメーカーも。

だが、デジタル化により手書きの機会が減り、鉛筆が売れなくなっていたので、これは嬉しい悲鳴だ。「紙に色を塗る」というこのアナログな趣味をより楽しむための、文具メーカーからの提案も始まっている。

ファーバーカステルのサイトからは、塗り絵の原画「Drawing Book」がダウンロードできる。塗る色番号が指定されていて、ステップに従って塗っていくとお手本通りの絵が仕上がる。

原画

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出典: © Faber Castell
ステップ1に必要な色
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出典: © Faber Castell
ステップ1の塗り方が示される
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出典: © Faber Castell
ステップ2に必要な色
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出典: © Faber Castell
ステップ2の塗り方
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出典: © Faber Castell
ステップ3に必要な色と塗り方
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出典: © Faber Castell
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出典: © Faber Castell

スタッドラーはジョハンナ・バスフォードとコラボしている。

ジョハンナの塗り絵には、決められた色も推奨される色もない。彼女はモノクロの原画を描くだけで、色を決めるのは本を買った人の仕事。彼女はそれを「コラボレーション」と呼び、色が塗られて初めて作品が完成すると考えている。

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出典: © Caran d’Ache

スタッドラーのサイトからはジョハンナデザインの原画がダウンロードでき、完成した絵をインスタグラムに投稿すると、世界中の「作家」の作品と共にギャラリーに展示される。こちろ

アナログとデジタルが融合した、色鉛筆の新しい楽しみ方だ。