バチカン市国に、スイス衛兵団(Schweizer Garde)と呼ばれる男たちがいる。その数わずか110名という選び抜かれた彼らの魅力に迫る。

スイス衛兵団は、ひとことで言うとローマ教皇を守るために存在する特別な兵士たちのこと。

彼らは教皇の住居を警備したり、身辺の安全を守るとともに、バチカン市国の城門を警備するなどの任務も負う。
槍を手に、黄・青・赤の派手なルネッサンス風の制服に身を包んだ姿がなんとも印象的。正式な式典のときなどには、甲冑や赤い飾りのついた兜を身に着けることもある。
このかぶともなかなかイケている。
しかし、イタリアのローマ市内に位置するバチカン市国においてなぜ「スイス」なのか。それには歴史的な理由がある。中世後期、当時のスイスは大変貧しく、多くのスイス人たちが外国で働かなければならなかった。若い男性たちは傭兵となりヨーロッパ各地の君主のために戦い、圧倒的な強さを誇ったという。そして1505年、当時の教皇ユリウス2世も自身のための傭兵を欲し、評判だったスイス傭兵に要請し隊を整えた、というのがスイス衛兵団のはじまりだ。
「教皇とバチカンを守る」という彼らの使命はいまも引き継がれている。

わずか110名で構成されるというスイス衛兵になるためには、もちろん、以下のような大変厳しい条件がある。
・19歳から30歳までであること
・独身であること
・スイスの大学入学資格を有しているか、職業訓練及び兵役を終えていること
・身長174cm以上であること
・さらには、美しいふくらはぎを有しているとなおよし!(ひざ下丈の制服を身に着けたときに美しく見えるからだとか……)

頭脳明晰で体格もよく、見目麗しくなければならない……と、スイス衛兵団の一員に選ばれるのは大変な栄誉。一般の兵の職務期間は25か月間と定められており、バチカンに行けば、誇らしげにその役割を果たす彼らの姿が見られる。