『フォーブス』誌の「世界で最も影響力のある女性」として2015年も1位となったメルケル。ドイツの首相に就任して十年が経った。彼女は、なぜトップで居続けられるのだろうか

1. 「お嬢さん」として愛され、「母」へと成長

アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)の政治家としてのキャリアは、ドイツ統一を成し遂げた首相、ヘルムート・コール(Helmut Kohl)に見出され重用されたことに始まる。当時は「コールのお嬢さん(Kohls Mädchen)」と呼ばれ、コール首相が父のように後ろ盾に立った。力のある男性に気に入られ、チャンスをつかんだ。

 

メルケルは「お嬢さん」として飛び込んだ世界で、「お母さん」へと成長する。暖かく安心感のある両手で、国民を支える「母」へと変貌を遂げた。

 

2. 強さを内に秘めつつ冷静

人と話をしたり、人の話を聞いたりするとき、メルケルは胸の下で両手を組み、ひし形を作る。これがとても落ち着いた印象を与えている。

彼女が両手で作るひし形は「メルケルの斜方形(Merkel-Raute)」と呼ばれ、トレードマークとなった。相手に対するある種の愛が込められていると言う。

 

3. 影響力のある女性を味方につける

メルケルに最も近いアドバイザーはベアーテ・バウマン(Beate Baumann)である。彼女はメルケルの事務所を管理している。そして、政治的な日々のテーマに関する率直な意見を、メルケルに対して言うのが彼女の役目だ。バウマンは20年経ってもメルケルとSieを使って敬語で話す。

二番目のアドバイザーはエバ・クリスチャンセン(Eva Christiansen)だ。彼女はメルケルより16歳若いが「メルケルに耳打ちする人(Merkel-Flüstererin)」と呼ばれている。彼女は連邦首相府内で、政治戦略の展開など重要な部分を担っている。

「トリオ」と呼ばれるこの女性リーダー3人の写真。メルケルの隣がエバ・クリスチャンセン、その隣がベアテ・バウマン

 

メルケルが政治家として成功した影には、フリーデ・シュプリンガー(Friede Springer)の助けも見逃せない。大衆紙「ビルト」を発行し「欧州で最も成功した新聞社」と言われる、アクセル・シュプリンガー社の創設者の未亡人だ。より国民に受け入れられるよう、髪型や服装についてアドバイスした。

4. 気さくである

セルフィーに応じる首相

2014年の11月にオーストラリアを訪れたとき

 5. 演説はつまらなくとも、少人数の会談で「説得力」を発揮する

メルケルは大勢を前に行う演説はあまり得意ではない。しかし、少人数での打ち解けたミーティングのあとには、彼女は敵陣営の人々にさえ好かれてしまう。理性的で感じがよく親切だと皆口々に言う。 猿にとっても彼女の側は居心地がいい?!

6. 攻撃する者や敵に回ろうとする者には冷血

政権政党の若い政治家の多くは、メルケルの地位を脅かすことのないよう、退陣するか他のポストに退くことを余儀なくされる。ハリーポッターのヴォルデモートに例えられることがある。

7. コミュニケーションツールを使いこなす

メルケルは、力を持つ重要人物とSMS、つまりショートメッセージでコンタクトを取る。彼女が携帯やスマートフォンを片手に、メッセージを打っている姿は定番だ。ここで、政治的妥協に漕ぎ付けたり、会合の約束を取ったりする。

8. とても優秀である

東ドイツで受けたドイツの大学進学資格試験アビトゥーア(Abitur)で、メルケルは最高の評価1.0をとった。論理的思考が前提の物理学を学び、最高評価で大学を卒業した。

日本のロボットASIMOと

Merkel Asimo
出典: Bundesregierung/Denzel
9. 睡眠は5時間で十分

メルケルは1日5時間までしか眠らない。これ以上は必要ないのだという。それでもエネルギーは常に満タンだ。

来日時の様子

Merkel Japan
出典: Bundesregierung/Denzel
10. 妻を支える夫を持つ

5歳年上の夫ヨアヒム・ザウアー(Joachim Sauer)とは、1998年に結婚した。二人とも2度目の結婚。表に出ることなく、影でしっかりと妻を支える。

2007年にドイツで開催されたG7先進国首脳会議では、首相や大統領の夫人やパートナー達をもてなした。その中で、もちろん彼は唯一の男性だった。

Merkel Mann Burg Schlitz
出典: Bundesregierung

一方、妻は「世界で最も力を持つ者達」の中に、たった一人の女性として肩を並べる。2015年ドイツのG7にて。

Merkel G7 Elmau
出典: Bundesregierung