トラックの使用済み幌を再利用したメッセンジャーバッグで知られるスイスのブランド『フライターグ』。新たに堆肥化する新繊維素材『F-ABRIC』を発表

『フライターグ』の創業者、マーカス・フライターグとダニエル・フライターグ兄弟の信念は強い。彼らがやりたいことは一貫している。新しい製品の発明ではなく、既存の素材(廃材)に新たな役割を与えるということ。これがまさに彼らが呼ぶところの「リコンテクスチュアライジング=再編、再構築」である。

『フライターグ』の起業のきっかけになったメッセンジャーバッグは、日常風景のふとした思考の転換から生まれたものだった。その頃、二人は、チューリッヒのとある幹線道路脇の高層集合住宅に住んでいた。朝から晩まで騒音と排気ガスをまき散らして走り去る運送トラックをベランダから眺めている時だった。何台も何台も途切れることのないトラックを目で追っているうちに、カラフルな幌に目がいった。その色鮮やかで丈夫な幌を生かして何か作れないだろうか。その思考の先に生まれたのが、今では世界のサイクリスト達に愛用されている『フライターグ』のメッセンジャーバッグなのだ。

リサイクルの価値を二人に教えてくれたのは彼らの両親だった。「1978年の時でした。父がコンポストの仕組みを教えてくれたのです。『循環』という視点から物事を考える楽しさを知りました。」とマーカス・フライターグは語っている。「循環」に基軸を置いた思考遊び。そこから生まれるのが『フライターグ』の製品である。

こうした二人が本社オフィスを作るとき、古い貨物コンテナに目をつけたのも納得がいく。

2006年にチューリッヒにオープンしたフラッグシップストア。19個の古い貨物コンテナからできている
出典: Freitag

2006年にチューリッヒにオープンしたフラッグシップストア。19個の古い貨物コンテナからできている

出典: Freitag

年間に350トンものトラックの幌を使用。バックルやベルト、ひも穴などの細かいパーツが取り除かれてから裁断される

Plane einer Freitag-Tasche
出典: Freitag

本社ビルの地下には、トラック幌を洗濯する巨大な洗濯機がある。浄化された雨水15,000リットルを毎日消費する

動画:フライターグのバッグが生まれるまで

そしてフライターグは新たな挑戦を始めた。100%堆肥可能な生地によるアパレルラインを立ち上げたのだ。素材は靭皮繊維、麻、リネン、モーダル(セルローズファイバー)。全て地産地消理念のもと、収穫・調達・縫製すべてがヨーロッパ内で行われている。

出典: Freitag/PD

リネン糸を製造しているノルマンディーの亜麻農家

出典: Freitag/Lukas Wassmann

パンツには、麻糸が使われている

出典: Freitag/Lukas Wassmann

基本となる素材はイタリアで織られ、アルプスを越え、最終縫製はポーランドで行われる

出典: Freitag/Lukas Wassmann

フライターグ兄弟自らが新製品をテスト

出典: Freitag/Lukas Wassmann

パンツに施されたエクストラポケット。ディテールにもこだわっている

出典: Freitag/Oliver Nanzig

素材は全てオーガニック繊維。リサイクル時は、メタルのボタンさえ取り外せばすべて土に還る

出典: Freitag/PD

堆肥にして3ヶ月が経過したフライターグのパンツ。

日本でも人気の高いフライターグは、東京に2店の直営店を構えている。両店舗で新アパレルライン『F-ABRIC』が展開されている

1号店となった銀座店
2013年にオープンした渋谷店